ご葬儀には地域や家庭によって様々な風習やしきたりがあるものです。
ですが、それらの本来の意味や由来は知らない事の方が多いのではないでしょうか?
神棚に半紙を貼る、お線香の火を絶やさないようにする、お棺を出す際には玄関以外から出す、北に枕を置いて寝てはいけない、などなど……。
今回はその中から山形市のご葬儀の際にもよく耳にする【寝ずの番】についてご紹介します。
寝ずの番とは~お通夜の夜は眠れない?~
寝ずの番とは、「通夜が終わってから翌日の葬儀まで、喪主様やご遺族が火を絶やさないように線香やロウソクを替え続けること」をいいます。
通常の線香の燃焼時間は約30分、ロウソクは約5時間なので、火を絶やさないようにするには、寝ずに替え続ける必要があるということです。
ですのでこれらの行為は【寝ずの番】と呼ばれるようになりました。
寝ずの番をする理由
線香やロウソクの火を絶やさないようにする理由は、
①線香の煙が故人様にとっての食べ物の代わりとなり供養となること
②線香やロウソクの火が故人様の道筋を照らす光となること
という言い伝えがあったためです。
また、保冷用のドライアイスがなかった時代には線香を絶やさないことによって、腐臭を和らげたとも言われています。
昔のご葬儀では喪主様やご遺族が葬儀場に泊まり込んで、協力して線香やロウソクの火を絶やさないようにしていました。
これらの文化は鎌倉仏教の時代にはありましたので、約700年前から続いていることになります。
寝ずの番に対する考え方の変化
しかしながら、最近では【寝ずの番】に対する考え方も多様化してきております。
寝ずの番を行わずにゆっくりお休みされる方が多くなってきております。
線香やロウソクに関しては、長時間タイプの物が普及してきたため、お通夜の後にもきちんとお休みすることが可能となりました。
一般的なお線香では燃焼時間は15分~30分ですが、渦巻きタイプの巻き線香は一度火をつけると約10時間燃焼します。
ロウソクも液体タイプの物や、24時間もつものなど様々な長時間タイプの物があります。
これらを使用することにより、寝ずに取り換えずとも、火を絶やさずに過ごすことができます。
寝ずの番をすると翌日のご葬儀に寝不足のまま臨むことになってしまいます。
心身共に疲弊しているご葬儀において、さらに睡眠も取れないとなると、疲労から体調を崩してしまう危険性もあります。
そのため通夜が終わった後はしっかりと休んで、翌日のご葬儀に備えた方が良いという考えも広く普及しております。
また以前ですと、喪主様を始めご遺族様が葬儀場に泊まることが多かったのですが、最近では会館には泊まらず一旦お家へ帰ってお休みされる方も多いようです。
まとめ
寝ずの番についていかがだったでしょうか。
故人様を供養する大切な文化ですが、新技術の登場や時代の流れと共に少しずつ考え方が変化しております。
・寝ずの番とは、線香とロウソクの火を絶やさずに交換し続けること
・火を絶やさないことが故人様の供養に繋がるという言い伝えがあった
・最近では長時間タイプの線香、ロウソクが普及しており、きちんと休むことができる
博善社ではお通夜室利用の際はもちろん、ご自宅へご安置の場合でも長時間タイプの線香やロウソクをご用意させていただいております。
山形でも【寝ずの番】という風習は色濃く残っているものです。
ご家族様の希望される形でお過ごしいただけるようにお手伝いさせていただきます。